あなたは、お子さんにこんなことを言ったことはありませんか?
「こぼさないで速く食べなさい!」
これを聞いたお子さんは、言われたとおりしようとするんですが、戸惑ってどうしていいかわからなくなってしまうものなんです。なぜでしょうか?
それは「言われたとおりにすること」が無理だからなんです。人類学者のベイトソンは、2つの背反する命題を同時に与えると、それを受け取った子どもは、ダブルバインド(二重拘束)状況になると説明しています。
では、ここで、お子さんの立場になってちょっと考えてみましょう。お母さんから「こぼさないで、速く食べなさい!」と言われたお子さんは・・・
1.こぼさないようにする ⇒ 丁寧に口に食べ物を運ぶ ⇒ 速く食べることができない |
2.速く食べるようにする ⇒ どんどん口に食べ物を運ぶ ⇒ こぼしてしまう |
つまり、速く食べればこぼしちゃうし、こぼさないようにすると速く食べることができないので、どうしていいかわからなくなってるんですね。このように、選択肢どちらを選んでも命題に応えることができない状況、つまり二重に拘束されている状況がダブルバインドなのです。
もちろん上記のお母さんは、意図的に2つの相反するメッセージを送っているわけではなく「適度にこぼさず、適度に速く食べてほしい」と伝えたいんだと思います。でも、お子さんは言葉のままに受け取ってしまい、ダブルバインド状況になり、どうすることもできなくなってしまうんですね。
もし、言われた相手が友達や遠い親戚くらいなら、その場から逃げるという方法でダブルバインド状況に対処することもできるでしょう。しかし、お子さんにとって、お母さんから逃げるという対応を選択することは無理です。
よって、お子さんは、愛されたいお母さんの命題に答えられないという感情的につらい立場におかれることになります。そして、逃げられずに耐えられなくなったお子さんは、徐々に“しゃべらなくなる”“相手の話を聞かなくなる”などお母さんとのコミュニケーションを断つという方法で、つらい状況に対処するようになることもあります。
また、ダブルバインドは、言葉だけでなく態度や行動でも起こることがあるんですね。例えば、お父さんがお子さんに「好きなことを夢として持つことが大切だ!」と言ったとします。そして、お子さんは自分の好きなことを考え、お父さんによろこんでもらおうと「僕の夢はパイロットになること!」と報告しました。ところがお父さんはムッとして、よろこぶどころか相手にしなかった・・・
お子さんにしてみれば、お父さんの期待に応えようと好きなことを一生懸命考えたのに、それが結果的に否定されてしまったように受け取れます。こんな立場におかれたお子さんは、ダブルバインド状況におかれ、どうしていいのかわからなくなってしまうんです。
このように、お子さんは、ご両親が何気なく言った「矛盾したメッセージ」に心を痛め、それを言い出せずに黙ってしまうこともあります。このような状況が継続的に繰り返されると、お子さんの未来に悪い影響が及ぶこともあるので、あなたのお子さんが、“言うことを聞いてくれないな・・・”と思ったら、まず自分が矛盾したことを言っていないかどうか、お子さんの立場で振り返ってみるといいかもしれませんよ。なぜなら、いつもと違うお子さんの「行動」には、きっと何か「原因」があるはずですから。
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